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大阪地方裁判所 昭和50年(ワ)4257号 判決 1977年12月22日

原告兼反訴被告

(以下、単に原告という)

マルベニ・アメリカ・コーポレイション

右代表者

ケイ・ハルナ

右訴訟代理人

廣川浩二

右訴訟復代理人

美根晴幸

被告兼反訴原告

(以下、単に被告という)

株式会社関西鉄工所

右代表者

武村富治夫

右訴訟代理人

大橋光雄

主文

原告の本訴請求を却下する。

被告の反訴請求を却下する。

訴訟費用は、本訴について生じたものは原告の負担とし、反訴について生じたものは被告の負担とする。

理由

(本訴について)

一原、被告間の米国ワシントン州キング郡管轄上級裁判所事件番号第七一三二四五号事件について、同裁判所が一九七四年(昭和四九年)九月一七日「被告は原告に対して金八万六千アメリカドルを支払え」との判決を言渡し、右判決が同年一〇月一七日確定したことは当事者間に争いがない。

二成立に争いのない<証拠>によれば、原、被告間の大阪地裁昭和四五年(ワ)第六六八号損害賠償義務不存在確認請求事件について、同裁判所が昭和四九年一〇月一四日「原告が米国ワシントン州キング郡管轄上級裁判所事件番号第七一三二四五号事件において敗訴した場合に、原告が行使を受ける右損害賠償債務についての被告の原告に対し負担すべき金九九〇〇万円の求償債務が存在しないことを確認する」との判決があつたことが認められ、また、本訴提起の際に右判決がすでに確定していたことは弁論の全趣旨により明らかである。

三右当事者間に争いのない事実及び認定事実によれば本訴提起の際に原告が執行判決を求める本件米国判決と同一事実について矛盾抵触する日本裁判所の確定判決があつたことが認められる。

そこで、右米国判決について民訴法二〇〇条各号の要件があるかどうか検討するに、同一司法制度内において相互に矛盾抵触する判決の併存を認めることは法体制全体の秩序をみだすものであるから訴の提起、判決の言渡、確定の前後に関係なく、既に日本裁判所の確定判決がある場合に、それと同一当事者間で、同一事実について矛盾抵触する外国判決を承認することは、日本裁判法の秩序に反し、民訴法二〇〇条三号の「外国裁判所の判決が日本における公の秩序に反する」ものと解するのが相当である。そうすると本件米国判決は民訴法二〇〇条三号の要件を欠くので我国においてその効力を承認することができず原告の本訴請求はその余の点を判断するまでもなく理由がない。

(反訴について)

原告は本件反訴が本訴との間に牽連性がないと主張するので検討するに、本件本訴は米国判決(米国第二訴訟判決)を日本において執行するためにその執行承認を求めるものであつて民訴法二〇〇条の要件の存否を審理するものにすぎず、その判決の当否を調査することができないものであるところ、本件反訴は米国第二訴訟の提起が不法行為を構成するからその損害賠償を求めるというのであるから、本件反訴が本訴の目的たる請求又は防禦方法と牽連するものでないことは明らかであり、また、本件反訴を独立の訴として審理することもできないので(最高裁判所昭和四一年一一月一〇日判決、集二〇巻九号一七三三頁参照)、本件反訴は不適法なものであるといわなければならない。

(結論)

以上の次第であるから、本訴反訴請求をいずれも却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(道下徹 鈴木敏之 下山保男)

<参考>

(大阪地裁昭四五年(ワ)第六六八六号、損害賠償義務不存在確認請求事件、昭49.10.14年第二〇民事部判決)

【主文】

一 被告が別紙訴訟の表示記載の訴訟において敗訴した場合に、被告が行使を受ける右損害賠償債務についての原告の同被告に対し負担すべき金九、九〇〇万円の求償債務が存在しないことを確認する。

二 訴訟費用は被告の負担とする。

【事実】

第一 当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨

主文同旨

二 被告の本案前の答弁

本件訴を却下する。

第二 当事者の主張

(請求原因)

一 原告は大阪市において鉄工業を営み、プレス機械その他各種機械の製造、販売を目的とする会社である。訴外丸紅株式会社(終局判決をするため口頭弁論を分離する前の相被告―以下「旧相被告」という)は大阪市に本店を、内外各地に支店を置き、国内国外にわたり貿易業を営んでいる。被告は旧相被告が米国ロスアンゼルスに設立した米国法人であり実質上旧相被告の米国支店である。

二 原告は昭和四一年(一九六六年)旧相被告に一一〇トンパワープレス(以下「本件プレス機械」という)を、代金二六〇万円、引渡期限昭和四一年六月一五日、引渡場所神戸倉庫渡の約定で売り渡した(以下「本件売買」という)。その後本件プレス機械は旧相被告→被告→米国ウエスト・コースト・マシナリーカンパニー(以下「ウエスト社」という)→シヤトル市ボーイング社(以下「ボ社」という)の経路で順次転売され、ボ社において使用していたところ、昭和四三年六月同会社の従業員ジエリー・ドウーチが本件プレス機械により右手指を切断するという事故が発生した。

三(一) 右ジエリー・ドウーチはウエスト社、被告及び原告の三者を共同被告として(ただし、原告には訴状は送達されていない)昭和四四年(一九六九年)五月米国裁判所に訴を提起した(以下「米国第一訴訟」という)。

(二) 被告は原告に対し、右米国第一訴訟と並行して、同訴訟において被告が敗訴した場合原告に対し、金二七万五、〇〇〇ドル(金九、九〇〇万円―一ドル金三六〇円換算)以上の損害賠償を請求する旨を予告した訴訟(以下「米国第二訴訟」という)を米国第一訴訟が係属している裁判所に提起し、原告は、昭和四五年九月大阪地方裁判所を通じ右米国第二訴訟の訴状の送達を受け、これに応訴した。

四 しかしながら、原告の被告に対する前項(二)記載の損害賠償義務は存在しない。

すなわち

(一) 本件売買は、国際売買ではなく、国内売買であるから、原告の売主としての責任は神戸渡をもつて終了した(米国内における転売については旧相被告ないし被告が売主としての終局的な責任―それが売買契約上の担保責任たると、製造者としての不法行為責任たるとを問わない―を負うべきである)。

(二) 米国第一、第二訴訟においては、いずれも本件プレス機械の製造者としての不法行為責任が追求されているようであるが、本件プレス機械のような簡単な構造を有するにすぎないものについては買主において自らこれを保守監理し得るものであつて製造者に不法行為責任の発生する余地はない。

(三) 被告(ないし旧相被告)は米国における終局的な売主としての立場から米国第一訴訟において本件プレス機械の故障の有無、原因及び本件事故の原因等を追求するなどして自ら十分防禦方法を尽くすべきであるのに、これを怠り「すべては(本訴)原告の責任である。(本訴)原告が米国第一訴訟の法廷に出て自ら防衛しなければ被告が敗訴する。被告が敗訴すれば(本訴)原告の責任である」として米国第二訴訟を提起したことは自己の怠慢の結果に押しつけるものであり、その不当であることは明らかである。

五 しかるに、原告は前記のとおり米国第二訴訟において「被告」として訴追されており、前記三(二)記載の責任を負担するやもしれぬ急迫した状態にある。

六 よつて、原告は被告に対し、被告の提起した不当な米国第二訴訟を防衛するため、本件訴訟において前記金九、九〇〇万円の求償債務が存在しないことの確認を求める(したがつて、本件訴訟の実体は米国第二訴訟に対する反訴に相当する)。

(被告の本案前の主張)

一 本件訴につき日本の裁判所には裁判権がない。したがつて本件訴は不適法である。

二 本件訴は反訴の要件を具備しない。

三 本件訴は訴の利益を欠くから不適法である。

【理由】

一 被告の本案前の主張が理由がないことは、本件について当裁判所が昭和四八年一〇月九日言渡した中間判決において示したとおりである。

二 被告は、原告主張の求償債権を有することにつき何ら主張、立証をしないで、右債権を有するものとは認められず、これによれば、結局原告の本訴請求は理由があることに帰し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(奈良次郎 惣脇春雄 大橋寛明)

訴訟の表示

米国ワシントン州キングカウンテイー上級裁判所事件番号第七一三二四五号、製造物責任に基づく損害賠償請求訴訟

原告 ジエリー・ドウーチ

被告 米国ウエスト・コースト・マシナリー・カンパニー、本訴原告反訴被告

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